昭和漫画少年時代


14新潟地震(にいがたじしん)

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それは、宇宙人の地震攻撃だったのだろうか?

はたして昨日の老人の言葉が的中しました。

1964年(昭和39年)6月16日午後。

何かの集会だったのか、その時ボクを含めた5年生全員が体育館に集まっていました。
午後1時01分41秒。
どこかでドンという雷か花火のようなもの凄く大きな音がしたと思うと、一瞬床が落ち込むような感覚がしました。

その後、突然、ゴゴゴという縦揺れがきました。
とても立ち上がる事などできるはずのないものすごい揺れです。
やがて横揺れになってから、体育館にいた者はいっせいに無我夢中で体育館の数カ所ある出口へ向かって走り出しました。
走るとはいっても、とてもまっすぐになど走れるものではありません。

ようやく出口にたどりついても、押し寄せた人で詰まってしまい、ボクは大きな引き戸のところから出ることができません。
出口の戸に体の左半分を挟まれたまま、後ろから次々と押し寄せてくる人の波に圧迫されてしまいました。

胸が圧迫されて息苦しくてこのままでは死にそうだと思った瞬間、誰かが手を引っ張って抜き出してくれました。
一瞬、昨日の老人の手だと思いましたが、

「大丈夫だが?」
「太志(ふとし)くん!!」

太志(ふとし)くんでした。
そのまま二人で昇降口から外へと飛び出しました。
抜け出したときにでもついたのでしょう、腕に軽い擦り傷があります。

ほかの児童達もそれぞれの出口から校舎の外へ飛び出してきました。
揺れはしばらく治まらず、立っている地面は風に揺れるシーツのように大きく波打っています。
学校のかたわらを流れる小さな堰からは、水槽を揺らしたようにザブンザブンと水がはじけ、溢れた水が地面にまで跳ね上がってきます。

やがて長く続いた揺れもようやくしょうこう状態になりました。
ボクたちは全員グランドに集まり、点呼をしている最中に、今度は大きな余震が襲って来ました。
その時に、グランドに面した昇降口のあたりの学校の壁がドドっと崩れ、土煙が上がりました。

ボクは本当に生きた心地がしません。
こんな経験は今までにしたことがありませんでした。
太志(ふとし)くんも、言葉を無くしているようです。
ボク達ばかりではなく、みんながとても不安な顔をしています。
ボクのように軽い擦り傷を負ったり、泣いている子供もたくさんいます。
幸い大けがを負ったものはいなかったのが、不幸中の幸いでした。

この地震は「新潟地震(にいがたじしん)」と命名されました。

震源は新潟県粟島南方沖40km(北緯38度22.2分、東経139度12.7分、深さ34km)。
地震の規模はマグニチュード7.5。
死者:26名
家屋全壊:1,960棟
家屋半壊:6,640棟
家屋浸水:15,298棟

特に、震源地の新潟では被害が大きかったようです。
新潟市内の信濃川左岸では、河畔の県営川岸町アパートが液状化現象のために重なって倒れました。
また、震源に近かった信濃川右岸では、新潟空港の滑走路が液状化現象と津波のため水に浸かりました。
そして、その空港と港の間の昭和石油新潟製油所(現昭和シェル石油新潟石油製品輸入基地)の石油タンクが12日間炎上し、周辺の民家60戸にも延焼しました。
この火災は国内で起きたコンビナート火災としては史上最大・最悪のものであると言われています。
この石油タンクの火災は液状化現象が原因と言われていましたが、後に長周期地震動によるものであることが解明されたそうです。

そして、山形県内の庄内地方、鶴岡市の大山・水沢・西郷地区では家屋の倒壊が相次いだそうです。
鶴岡市にある京田幼児園では園舎が倒壊し園児3名が犠牲になりました。
また、酒田市の市立第三中学校では、グラウンドに亀裂が入り、非難していた生徒が転落して圧死するという痛ましい事故も起きたのだそうです。

ボクたちが非難したグランドで同じような事があったと考えるとぞっとします。
不幸にして亡くなられた方々のご冥福を心からお祈りするばかりです。

後にボクの暮らしている中山町は活断層が走っているためか地盤が弱いので特に揺れがひどいのだとわかりました。

※新潟地震(にいがたじしん)に関する記載の資料として、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から『新潟地震(にいがたじしん)』の項目を参考にさせていただきました。


(2008年8月19日記)


※この作品はほとんどフィクションですから、年代などあてになりません。
文中の登場人物も仮名ですが、実在される方の敬称も略させていただきました

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