昭和漫画少年時代


15新潟地震-その2

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その日は先生達が校内の危険個所などの点検をするために、いったんそのまま下校することになりました。
明日は校内の一斉そうじをすることになりました。

ボクと太志(ふとし)くんは、いったんそれぞれの自宅に帰り、様子をみてからボクの家へ来ることを約束して下校しました。

自宅に戻ると、自宅では父母や祖父が総出で後かたづけをしている最中でした。
戸棚の中や、棚の上の物、神棚、仏壇の中などが散乱していましたが、幸いこの程度ですんだようです。
家屋への大きな損傷はないようでした。
家にいても、かえって後かたづけの邪魔になっているようなので、外に出ているようにいわれました。
ボクが外へ出てみると、自宅の前にある同窓生の大きな白壁のお蔵(土蔵)の壁の一部がそげて、黄銅色のような地肌が見えていました。
ボクは太志(ふとし)くんが来るまで近所を歩いて廻って見ることにしました。
近くの羽前長崎駅に行ってみると、そこにあるやはり土蔵の倉庫のひとつがぺしゃんこにつぶれていました。
ボクはあらためて地震の規模の大きさを知りました。

やがてまた自宅へ戻ると、ちょうど太志(ふとし)くんが走ってやって来るところでした。

「しえ(家)、大丈夫だっけが?」
ボクが訊ねると、
「うん、たいしたごど、ないっけな」
「んだがした(そうだったのか)」

隣の土蔵のそげた壁を見た太志(ふとし)くんは、
「ありゃりゃ、こわっだのがあ(壊れたのかあ)」

「えぎ(駅)の倉庫も、つぶっでだっけばな」
「んだが、行ってみっべ」

子供は何にでも興味津々なものです。
ボク達は再び駅に向かいます。
一時運休しているのか、あるいはまだ列車の来る時刻ではないのか、客車はおりません。
荷物の積み降ろしをするために支線に止まっている黒い貨物の貨車が一台あります。

崩れた倉庫のところにやってきました。

「たまげたね。
 こだな倉庫でも崩れるんだじえ」
「んだな」

ボク達がしげしげと見ていると、脇から声がします。

「やろ、まだあったな(少年、また会ったね)」

ふり返ると黒い貨物の貨車の脇に昨日の老人がじっと立っていました。

「どごもいだぐ、すねっけが?(どこも怪我をしなかったかい)」

老人はこの上ないような表情でニコリと微笑みました。


(2008年8月20日記)



※この作品はほとんどフィクションですから、年代などあてになりません。
文中の登場人物も仮名ですが、実在される方の敬称も略させていただきました

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