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- ♪おらは死んじまっただ おらは死んじまっただ
おらは死んじまっただ 天国に行っただ
長い階段を 雲の階段を
おらはのぼっただ ふらふらと
おらはよたよたと のぼりつづけただ
やっと天国の門についただ
- 天国よいとこ一度はおいで
酒はうまいしねえちゃんはきれいだ
ワー ワー ワッワー
- 井上は佐藤から借りたレコード「帰ってきたヨッパライ」を自宅の卓上ステレオプレー
ヤーで聴いていた。
♪おらが死んだのはよっぱらい運転で
「アレーッ!」
おらは死んじまっただ おらは死んじまっただ
おらは死んじまっただ 天国に行っただ
だけど天国にゃ こわい神様が
酒をとりあげて いつもどなるんだ
- 「なあおまえ 天国ちゅうとこは
そんなにあまいもんやおまへんにゃ
もっとまじめにやれ」
「おもしろい歌だなあ〜。
- レコードの早回しに聴こえるこの歌は実に単純だ。
- でも、あじがある。
- なんでだろう……」
- 井上は中三コース(学研・発行の学習月刊誌)に「アングラブーム」という言葉を見つ
けていた。そして、ラジオから聴こえる「帰ってきたヨッパライ」を世間ではアングラソ
ングと呼ばれつつあった。
「これはまったくマイナーな曲だ、だってテレビでは早回しでは唄えないから、レコード
を流すラジオ専門になってしまう。
- しかも、詞がハレンチでとてもテレビでは唄える代物ではない。
- でも、おもしろいなあ、飽きないなあ」
と、井上は何回もレコードを聴いた。
♪天国よいとこ一度はおいで
酒はうまいしねえちゃんはきれいだ
ワー ワー ワッワー
毎日酒を おらはのみつづけ
神様のことを おらは忘れただ
「なあおまえ まだそんなことばかり
やってんのでっか ほならでてゆけ」
♪そんな訳で おらはおいだされ
雲の階段を おりて行っただ
長い階段を おらはおりただ
ちょっとふみはずし
おらの目がさめた 畑のどまんなか
おらは生きかえっただ
おらは生きかえっただ
この歌全体が今人気絶頂のドリフターズのギャグに通じるのではないか……
- 井上はそう思った。
そしてこの歌の登場人物を想像するのだった。
「帰ってきたヨッパライ」の登場人物は三人だ。
- 一人目はヨッパライ。
- 二人目は神様。
- 三人目はきれいなねえちゃん。
- 画用紙を取り出して、井上は鉛筆で丸や三角や四角を描いていた。そのうちに人物らし
き絵になっていった。
- 髪はバサバサ、目は酔ったボヤ〜とした感じ、鼻は団子、口は大きくしまりがない
……
- そんなイメージが井上の頭によぎって絵になっていった。
- おお、なかなかいいじゃないかあ。
- 井上は自分で感動した。
- その時間はわずか数分だった。
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- ※帰ってきたヨッパライ
ザ・フォーク・パロディ・ギャング 作詞
加藤和彦 作曲
JASRAC許諾 第J051213138号
- (2006年1月11日記)
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