34総会3



「ぐらこん山形支部を認めていただき、会員の実力が向上し、プロへの道、またはマンガを一生の友として描いていく人たちの発表の場であればたいへんうれしいです」
と、たかはしよしひでは村上の提案を補佐するように言った。
「ここにおられる石井編集長になんとか支部結成を認めていただきたいものです」
と、かんのまさひこが嘆願した。
するとホールからは一斉に拍手が起きた。 

村上はみんなの顔を一人ひとり見ながら話をつなげて言った。
「みなさんの意見や要望はたかはしセンセイやかんのセンセイにまとめられていると思います。
 いいですね?
 ハイ、それでは石井さんに正式にお願いをします。
 ぐらこん山形支部の結成を認めていただきますか?」

ホールはシーンと静まり返った。
そしてみんなの目は村上の傍にいるコム編集長石井文男を見た。 

石井は静かに立ち上がった。

 「ボクは先ほどの挨拶で、みなさんのマンガに対する情熱はすばらしいものだと言いました。
 そして今日ボクがこの総会にも参加することは、みなさんにとっても、ボクたちコム、いやマンガ界にとっても歴史的な日になるような気がします……」

静まり返ったホールで、石井の声だけが響き、さらに反響して聞えた。 

「この総会での意向をうけ、みなさんの要望どおり『ぐらこん山形支部』の結成を認可します!!」
石井の静かでゆったりとした語りに力が入った。
ホールには石井の声がさらに大きく反響した。
 

村上は目を大きく開き、石井に握手を求めた。
二人が握手をした瞬間に、一斉に拍手が起こった。
「石井さん、ありがとうございます」
村上の目に涙が溢れてきた。
「おめでとう!
 よかった、よかったネ」

と、石井が村上の肩をたたいた。

ホールのみんなは二人を囲むようにして拍手を贈り続けた。 
まんが展に行くために階段を歩いていた高校生が立ち止まって見ていた。



山形漫画予備軍総会は「ぐらこん山形支部結成総会」となった。

引き続き、村上の進行によって、結成総会が行われた。
コムの石井からはぐらこんの目的や歴史、そして将来像が語られた、
みんなが驚いたのはぐらこん支部は県毎にあるのではなく、北海道、東北、関東、中部、関西、九州というブロック毎に置かれていたことであった。
県単位というのは山形が初めてだった。
「東北は交通の便、地域の広さを考えてもブロックでは対応は難しいだろう」
という、石井のはからいだった。

支部長には井上はじめが選出された。
各地区の役員は次のように決まっていった。
 酒田地区長 曽根啓視
 山形地区長 高橋良秀 菅野正彦
 米沢地区長 青木文雄 鈴木和博 宮崎賢治
 

「短い間でしたが、酒田と山形、米沢の漫研で組織したこの山形漫画予備軍は今日をもって解散します。
 そしてぐらこん山形支部として新たな出発をします。
 ボクは秋になると会社の転勤で酒田から三重県四日市に行きます。
 その前にぐらこん山形支部が誕生してうれしいです。
 これからは井上くんが代表です。
 みなさん、彼を支えながらマンガ文化をいっそう発展させてください」

村上は総会を締めくくった。
それは山形漫画予備軍の解散宣言だった。
そして村上彰司の山形からのさよならの挨拶だった。

太陽がギラギラと会場を射していた。

(2006年 8月19日 土曜 記
 2006年 8月20日 日曜 記))



(文中の敬称を略させていただきました)
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