33総会2



村上の話が終ると石井文男が立ち上がって挨拶をした。

「みなさん、こんにちは。
 コムの石井です。
 まずは、今回の山形まんが展の成功おめでとうございます。
 若い同人会のみなさんが、半年に二回もこれだけ大掛かりなまんが展を開くとは全国にも例のないことです。
 驚きです。
 マンガを描いて批評しあう同人会から、同人会の新しい流れを感じざる得ません。
 今日ボクがこの総会にも参加することはみなさんにとっても、ボクたちコム、いやマンガ界にとっても歴史的な日になるような気がしてなりません。
 それだけみなさんのマンガに対する情熱はすばらしいものだと認識してもいいでしょう」


会場からは拍手が沸き起こった。

鈴木和博は自分が朝の挨拶で言ったことと、いま石井が述べたことが同じだったのには驚いた。
何かが起こるかも……と予測した。

「石井さん、ありがとうございました。
 さて、身に余るお言葉をいただきました。
 これから提案する『ぐらこん山形支部』結成案について遠慮のない討議をしてもらい、ここにおられる石井編集長にぜひとも、「ぐらこん山形」の結成の認可をしてもらいたいと思います」

村上はそう言って、
「ぐらこん山形支部結成案」
を提案した。

●各漫画研修会はぐらこん山形に結集し、
 酒田・山形・米沢の三地区を作る。
●各漫画研究会の実態を見ると会員人数は少ないので、
 各研究会を解散して地区活動に変更をする。
●プロマンガを目指す者に対しては、
 コム編集部との提携によって指導にあたる。
●マンガ家のアシスタントやアニメ界へ希望する者へも情報を提供し、相談に応じる。
●マンガ同人会にとしては今後も肉筆回覧誌を中心に作品を発表する。
●また、コム紙上でも優秀な作品は掲載をしていくように働きかけをしていく。
●山形まんが展やマンガ家たちとの交流会も年に一回は開催し、
 社会的にもマンガをアピールしていく。 

二十人からはザワザワと声が起きた。 

「質問、いいですか?」
そう言って酒田の男性が手を上げた。
「佐藤くん、どうぞ」※
村上が指して言った。
佐藤は体を左右に揺すりながら立ち上がった。
「あの……
 いままでの漫画研究会は解散するのですか?」

村上はこう答えた。
「そうなんだ。
 それぞれの漫研は会員数も少ない。
 ここが一つのチャンスだと思ったんです」
「チャンスって、なんのチャンスですか?」
「漫研がまとまることです」

村上は落ち着いて答えた。
酒田勢はお互いの顔を見た。
「村上さん、それは酒田固有のことですね。
 私たちは戸惑います」

酒田の△△漫研の女性会員が言った。
村上が穏やかに丁寧に話を続けた。
「事務局や機関誌がそれぞれあっても手間暇がかかるだけでしょう。
 その分を一つにして、酒田地区は作品を描くことに集中してはどうだろう」 


村上を除いた十名の酒田勢は困惑した顔をした。
しばらくの間だったが無言の時間が過ぎ、暑い空気が会場の雰囲気を一層重くした。

「よしっ!」
と、村上は手を打って再び話をした。
「みんなこんな案ではどうだろうか。
 それはね。
 ぐらこん会員は個人加入にして、自分の所属する漫研についてはそのままでいいということにする」
「それならいいです!」

と、男性から声があがり、酒田勢からは拍手が起こった。 

たかはしよしひでが手を上げた。
「あのよっス、
 おらだの山形漫画研究会は解散して、ぐらこんにまとまるっス。
 んだから、基本的には個人加入だねっス」

 井上はじめも手を上げて発言した。
「米沢漫画研究会も山形漫研と同じです」

「ハイ!これで問題は解決したね。
 みなさんはぐらこん山形支部結成をコム編集部に要請をしてよろしいですか」

村上は会場の十九人に承認を求めた。 

※佐藤=仮名です。

(2006年 8月18日 金曜 記
 2006年 8月19日 土曜 記))



(文中の敬称を略させていただきました)
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