32総会1




石井文男はツバメタクシーに乗って現れた。
虫プロ商事株式会社「COM」(こむ)編集長。
サングラスを掛けた石井は会場前で看板を見上げた。
「山形まんが展……か」
半袖のワイシャツに夏ズボンの石井は都会人らしい雰囲気を漂わせた。
石井が階段を上がっていくと、すれ違いざまに高校生や中学生が下りてきた。
それは数人の集団が三組だった。
それだけで石井は
「このまんが展は成功だな」
そう直感した。

三階の展示会場に着くと村上彰司が石井を迎えた。
「いや〜、暑いね〜」
これが石井の第一声だった。
「遠いところをありがとうございました」
村上が頭を下げた。
「こんなに暑い所だとは思わなかったよ。
 ほらすごい汗でしょう」

石井はハンカチで顔と首、そして腕の汗を拭いた。
それでも汗は止まらなかった。

村上は展示会場を案内して、石井を会員一人ひとりに紹介した。
「こんにちは!」
井上はじめが挨拶をした。
すると石井は親しそうに、
「やあ、先日はどうも。
 たいへん立派なまんが展になってよかったね。
 入場者も満員でほんとうによかった」

と、労いの言葉を贈った。
井上は石井の言葉を受けて、光栄だと思う気持ちと、ここまでやれたのはたくさんの人の協同によるものだと、そのことを忘れないようにしようと、改めて自分の心に刻んだ。 

村上はそろそろ二階で山形漫画予備軍総会を始めようと、井上とたかはしに言った。
鈴木和博と宮崎賢治は先に二階のホールに行き総会準備をしていた。 

総会中はまんが展の会場係などは、近藤重雄と小山絹代ら米沢中央高校生徒会役員と美術部のメンバーが行うことになっていた。
マンガ同人の会員はゾロゾロと二階ホールに下りて行った。


二階ホールには、数人が一緒に座れる真四角の大きな椅子が数個あった。
それを散らばらせて置いた。
さらには三階から黒板を持ってきて、臨時の会議室とした。 

総勢二十人が集まった。
村上は司会と提案者を兼ねてこの総会の主旨を説明した。 

「ボクたち山形漫画予備軍は、酒田を中心にたくさんのマンガ研究会によって結成しました。
 そして山形支部が山形漫画研究会によって組織され、米沢漫画研究会が協力団体としてこのまんが展を開催してくれました。
 事実上の米沢支部です。
 ボクらが酒田でこの予備軍を発足させるにあたり、どうしてもコムのぐらこん支部を目指していきたいと考えたのでした。
 切磋琢磨してマンガ家を目指す、一つのステップにこのぐらこんが役立てばと考えたのです。
 プロにならなくても漫画研究会やマンガ同人会でもいいんです。
 マンガが好きな県民がここに結集することで、山形にマンガ文化を創ることも可能になるのです。
 そのためにも「ぐらこん山形支部」の結成を希望したんです」
 

みんなは無言で村上の話を聞いた。

(2006年 8月17日 水曜 記))



(文中の敬称を略させていただきました)
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