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NOVA ESSAY-01
半澤和広(岸田役・NOVAシナリオ執筆)
- 『夢幻伝説』を観客として観た時は、主役として登場したT君を見て、かなり無遠慮に吹き出してしまった。
- その間抜けな演技といい、風貌といい、8ミリ(フィルム)映画という媒体の持つ親近感も手伝ってか、僕が知る範囲での身近なT君自身がそのままの姿で現れたからであろう。
ところが、今度は自分が登場する羽目になり、ラッシュを見せられて飛び上がってしまった。これをT君に見られるかと思うと、ほとんど血の気も失せて来る。
- 何がひどいって面がひどい。
- 断っておくが、僕は平生自分の顔をとりたてて上等だとも思わないが、それ程ひどいとも思っていない。しいて言えばT君といい勝負だぐらいに思っている。
- しかし、考えてみれば自分の顔を突き放して鑑賞する機会など、そう度々あるものじゃない。鏡という奴は所詮一人称だし、写真にしたって連続する時間の中の1コマだ。いいときは別として、ひどい時にはとりあえずうっちゃっておくことにしている。
が、ムービーとなると言い訳のしようがない。他人の目で自分を見る事が、これ程恐ろしい事とは思わなかった。
ま、顔なんて所詮主観の問題さと受け流しつつ、T君もなかなかいい男だとしきりに思う昨今である。
(『NOVACLUB』/1986年12月20日発行より転載)
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