昭和漫画少年時代


17陣取り(情けをかけたら負ける)

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「陣取り」という子供の遊びがありました。

言葉の響きは勇ましいのですが、地方によっては呼び名も違うのでしょうし、同じような遊びがあるのかどうかわかりません。
さて、この遊びは、五寸釘のような長い釘を手裏剣のようにして地面に投げて突き刺し、刺した部分を釘で直線をひいてつないで行きます。
お互いが一度引いた線を飛び越える事はできないので、徐々に相手の線(陣地)を取り囲んで行き、相手が枠の外に釘を打って直線でつなぐことを出来ないようにした者が勝ちという、簡単明快な遊びです。
もちろん相手の線(陣地)に触れることもできません。
触れでも負けです。
なにしろつないで行くのが直線なので、狭い空間を作られては逃げ出すことは困難になります。
できるだけ大きめに自分のスペースを確保していくもので、相手が自分のところに入れないように境目を狭く狭くして拡張していくのが、勝利のコツでした。

最初から大きく線を引いてもかまいませんが、地面がある限りどこまでも広がってしまいますので、キリがありません。

その日は、太志(ふとし)くんと、級友の正明くんの三人でこの「陣取り」をして遊んでいました。
もちろんこのゲームは複数人でも出来るのです。
その日は珍しくボクが一番陣地を多く穫っていました。
級友の正明くんは、徐々に狭められていき、もうすぐ逃げ場がなくなってしまいます。

ボクは正明くんをかわいそうに思って、逃げ場が出きるようにわざと離してくぎを打ちました。
それを見ていた太志(ふとし)くんは、ちょっと困ったような顔をしました。

案の定、その太志(ふとし)くんの予感通りに、正明くんはその情けをかけて開けた隙間から見事に抜け出します。
しかも、正明くんは容赦がありません。
あっという間に今度はボクの方が逃げ場を失ってしまったのです。
結局、ボクはあえなく降参し、やがて太志(ふとし)くんも負けてしまいました。

劇的な逆転というのは、きっとこのようなことをいうのでしょう。
ここで太志(ふとし)くんは、ちょっと困ったような顔をしたことの意味を知りました。

自分が情けをかけたからといって、こと「勝負」となると相手は情けをかけることなく全力で向かってくるものだ。

そのことを子供の遊びを通じて知り、その事を肝に銘じたひとときでした。

でも、大人になってからもその甘い性格は治ってはいないようです・・・。


(2008年9月2日記)



※この作品はほとんどフィクションですから、年代などあてになりません。
文中の登場人物も仮名ですが、実在される方の敬称も略させていただきました

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