昭和漫画少年時代


16大地震再び!?

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その老人はボクと太志(ふとし)くんを人なつっこい目で見ていました。
ボクたちは、言葉が出ずにただ黙っているだけでした。

「きんな(昨日)は、あすをいだぐして(足を怪我して)、今日は肘があ。
 ほだなでおわて(その程度ですんで)、えがったな(良かったね)」

ボクはコクリとうなずくばかりでした。

「まだ、あうべな」

老人はそういってからゆっくりと歩いて去って行きました。

太志(ふとし)くんは、その老人の後ろ姿をじっと見つめていました。

「おべっだが?(知ってるかい)」
「・・・わがらね・・・」



その新潟地震から数日が過ぎて、いくぶん落ち着きを取り戻したころのことです。
相変わらず、小さな余震は続いておりましたが、クラスでは誰からともなく、6月25日の午後一時にまた大きな地震がやって来ると言われ始めました。
特に女子の間ではまことしやかにささやかれておりました。
そういうことを真っ先に信じる性格のボクは、本当に心配で心配で仕方がありません。

太志(ふとし)くんとは相変わらず漫画についていろいろ話をしていましたが、クラスでうわさの再び大きな地震が来るかもしれないことを話すと、

「ほだごどないべえ(そんなことはないよ)」

と、まったく取り合ってくれません。

大地震や大火事の後の流言飛語は当たり前のことですが、心配性のボクは気が気ではないのです。

やがて、とうとうその6月25日がやって来ました。
うわさの当日ということで その日は朝からクラス全体がざわついておりました。
ボクの緊張もピークに達しようとしております。

そして、ついにその時はやってきました。

その時、午前の授業中にテストが行われていました。
シーンと静まりかえった教室。
突然、その静寂を破るように、外でバンという大きな音がしました。

やっぱり大地震の再来だ!!

それをきっかけにして張りつめていた緊張の糸はプツリと途切れて、叫び声を上げたクラスのみんなはいっせいに教室を飛び出しました。
もちろんボクも遅れまいと脱兎のごとく階段を下りて、一目散に中庭へ降りていきます。

しかし、飛び出してみて気が付いたのは、出て来たのはうちのクラスだけで、驚いた先生やよそのクラスの子供達も怪訝そうに窓から覗いております。
結局、担任の先生がやって来て、全員教室へ戻されました。
教室に残っていた太志(ふとし)くん達が先生に事情を説明してくれたのだそうです。
ボクは、デマを信じてタイヤのパンクの音をありもしない大地震と思って、パニックとなり自分のとった行動をとても恥ずかしいと思いました。

太志(ふとし)くんなど数人が、デマに惑わされず冷静に物事を判断したことを素晴らしいと思うのでした。


(2008年8月20日記)



※この作品はほとんどフィクションですから、年代などあてになりません。
文中の登場人物も仮名ですが、実在される方の敬称も略させていただきました

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