その老人はボクと太志(ふとし)くんを人なつっこい目で見ていました。 「きんな(昨日)は、あすをいだぐして(足を怪我して)、今日は肘があ。 ボクはコクリとうなずくばかりでした。 「まだ、あうべな」 老人はそういってからゆっくりと歩いて去って行きました。 太志(ふとし)くんは、その老人の後ろ姿をじっと見つめていました。 「おべっだが?(知ってるかい)」
その新潟地震から数日が過ぎて、いくぶん落ち着きを取り戻したころのことです。 太志(ふとし)くんとは相変わらず漫画についていろいろ話をしていましたが、クラスでうわさの再び大きな地震が来るかもしれないことを話すと、 「ほだごどないべえ(そんなことはないよ)」 と、まったく取り合ってくれません。 大地震や大火事の後の流言飛語は当たり前のことですが、心配性のボクは気が気ではないのです。 やがて、とうとうその6月25日がやって来ました。 そして、ついにその時はやってきました。
やっぱり大地震の再来だ!!
しかし、飛び出してみて気が付いたのは、出て来たのはうちのクラスだけで、驚いた先生やよそのクラスの子供達も怪訝そうに窓から覗いております。 太志(ふとし)くんなど数人が、デマに惑わされず冷静に物事を判断したことを素晴らしいと思うのでした。
|
第15回へ | 第16回 | 第17回へ |