太志(ふとし)くんが自分で作った漫画本を持って来ました。 大きさは別冊ふろくの大きさで、B6判(128ミリ×182ミリ)というサイズです。 『少年漫画』という名前は、太志(ふとし)くんが勝手に付けた架空の少年雑誌でした。 太志(ふとし)くんによれば、人気漫画家でなければ、別冊ふろくを描かせてもらえないのだそうです。 さて、その表紙は朝陽を浴びて、大地にすっくと立つ人物。 ロゴタイトルも入れてあります。 「ロボットなんだが?」 「んだ、鉄人と違って、手塚治虫の「魔神ガロン」のように、中に人が入って動かすんだ。 「へえ。カッコイイな」 「今の電気計算機(電子計算機)より何万倍も早く計算できる電気計算機が入っているから、ある程度は乗っている人の考えで自由に動かしぇるんだ」 「うんうん」 「大きさはどのぐらいあんのや?」 「人が乗らんなねがら、鉄人と同じぐらいが、もう少し大きいと思てる」 話を聞きながら表紙を見てみると、紙は厚紙のお菓子の箱を利用しているそうです。 太志(ふとし)くんの作る物語は、ひと味違うようです。 まず、現実を考えてみれば、少年探偵などはいないし、ましてや少年では地球の運命を任せるにははなはだ不安なのですが、そのような理屈が全く分からずに、単純に物語の世界に入って行ける多感な少年期だったのです。
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