昭和漫画少年時代


転校生

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翌日、驚きました。

先生に連れられて昨日のあの「坊主頭でプロレスラーのような大きな体の少年」が教室に入ってきました。
一瞬、何とも言えない圧迫感のような雰囲気が流れました。
ボクは昨日のこともあって、あまりよく顔を見ることが出来ません・・・。

先生は、
「今日からこのクラスの仲間になる大山太志(ふとし)くんです。
 大山太志(ふとし)くんは、お父さんの仕事の都合で北海道から転校してきました。
 みんな仲良くして下さい。
 えーと、それから、席はたかしくんの隣が空いているからそこにしなさい」

ボクはイスから飛び上がりそうになりました。
だって、たかしってボクの名前だからです。
自己紹介が遅くなりましたが、ボクの名前は「吉出たかし」。
いきなり隣の席だから驚いた驚いた。

坊主頭でプロレスラーのような大きな体の彼は、ノッシノッシと歩いて来ます。

ふとしって名前だけど、「チャンピオン太(ふとし)」は正義のために戦うレスラーだけど、こちらの太志(ふとし)くんは、まるでチャンピオン太を攻撃する悪役レスラーのようではないか・・・。
歩いてきた太志(ふとし)くんは、ボクの前で立ち止まると、まるで仁王のような形相でボクを見下ろして、隣の席に座ります。
もっとも仁王のような形相といったのはボクの想像なのですが、顔を見ることが出来なかったので、そう感じたのです。

授業が始まると、いきなり仁王、いや太志(ふとし)くんが手を挙げて、
「先生、オレ、教科書ないっス」
と、いうのです。
先生は、
「んだが、んだごんたら、たかしくん、太志(ふとし)くんに見せてあげなさい」

結局、低学年のように机を並べて勉強する事になりました。
太志(ふとし)くんは、ボクに向かって
「わるいな」
といって、にこっと笑います。
その笑顔の表情が妙に人なつこくて、ひょっとして悪役レスラーではないかもしれないと、ちょっぴり思うようになりました。

ボクの使っている教科書を見て、太志(ふとし)くんは、
「お前もパラパラ漫画描いてんのか?」
と、訊ねてきました。
教科書のスミにいたずらで描いたパラパラ漫画があったのです。
ロケットが教科書の下から上へ上昇するもので、我ながら上手く上昇していました。

太志(ふとし)くんは、それをパラパラとめくり、
「へえ、うまいなあ。
 お前才能あるんでないかい・・・」

と、感心しているようです。
ボクはまんざらでもないと思いました。

太志(ふとし)くんは
「オレも好きなんだ、パラパラ漫画。
 今度持ってきて見せてやるよ」

ボクはそんな彼に急に親しみを覚えてきました。
「ほんてん!みしぇでけろ(本当!見せてくれ)」
「わがた、明日持ってくる」

明日がものすごく楽しみでわくわくしてきたボクでした。


(2008年7月14日記)



※この作品はほとんどフィクションですから、年代などあてになりません。
文中の登場人物も仮名ですが、実在される方の敬称も略させていただきました

ボクと漫画大将第2回  

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